市上芸術
皆さんは「絵画」を意識したのはいつ頃で何がきっかけでしたか?
わたしは近所のラーメン屋に飾ってあった「東郷青児」の複製画でした。
地方だと美術館に行くのも一大行事で、何時初めて美術館に行ったのかも忘れていましたが、
あの目を伏せた幻想的な美女の姿は深く印象に残りました。
東郷青児といえば、デパートのエレベーターに作品画像が使われたり、
その他マッチや包装紙など日常のプロダクトを多くて手掛けていました。
その他、北野恒富など「美人画」が広がるのはデパートや酒類のポスターに使われたからでしたし、
絵画はプロダクトや広告のデザインに使われていた時代がありました。
美術館に行かなくても絵画が「日常」にあったのです。
ところが、写真や、グラビア、アニメそして最近では萌画がその地位にとってかわっています。
現代美人画家の池永康晟さんはその状況を絵画に取り戻したいとある提案をしました。
【市上芸術宣言】
浮世絵美人画から近代美人画まで300年続いた市上の絵画芸術が、
グラビア寫眞や萌の登場にその主座を譲ってから、既に半世紀が過ぎた。
画描き達は失望し衆目から逃れ、人間を描く事をやめてしまった。
私の少年時代には、ジュブナイルや広告やプロダクトに画描きの手業の痕跡と前世紀末の残り香があった、最後の幸福な時代であった。
絵画芸術は、卓上にあり、会場にあり、路上にあるという、しかし市上には今ない。
私は夢見ている、あの幸福な時代の復活を、人間を描こう、市上に還ろう。
なお、宣言の中にある「卓上芸術」は近代美順画の巨匠、鏑木清方が提唱したもの。
大きな会場で見る大作ではなく、
手元で心ゆくまで細かな筆遣いや色使いを楽しむことのできる「卓上芸術」には、
画帖や画巻、色紙、さらには挿絵などの印刷物までも含まれています。
そして池永さんの「市上芸術宣言」を4/6まで阪急うめだ本店で開かれていた「美人画ルネサンス」で
「市上芸術の部屋」として再現されました。
コーナーには池永康晟さんの美人画が使われたプロダクトのサンプルが置かれました。
(一部メモ帳などはロシアのDOMINANT社のもの)
ワインや化粧品、香水瓶の他、ポット、鉛筆削りなども今回作ってみました。
初めての試みでしたが、生活空間に溶け込む「絵画」を楽しんでいただけたとしたら嬉しいです。