「原安三郎コレクション 小原古邨展ー花と鳥のエデンー」
2018/10/05
茅ヶ崎市美術館で開館20周年の記念として「原安三郎コレクション 小原古邨(おはらこそん)展ー花と鳥のエデンー」が開かれています。
茅ヶ崎駅から10分弱歩くと看板が見えてきました。
さて、今回の展示作品の小原古邨作品は原安三郎コレクションによるものです。
原安三郎氏といえば戦前・戦後に活躍した財界重鎮の実業家で、有名な北斎や広重のコレクターで知られています。
なぜ、茅ヶ崎美術館での展覧会に至ったかというと茅ヶ崎市美術館がある「高砂緑地」は、
かつて原氏が所有していた瀟洒な南欧風別荘「松籟荘」の跡地にあるというご縁があったからなのです。
なるほど、看板が見えた入り口からは、少し長いアプローチを進んだところに
美術館が見えてきました。
先月16日は美術館でトークショーが行われました。私も参加してきたのですが、開始前に用意された席は満杯。
それでもキュレーターからの
「小原古邨」をご存知でしたか?」という問いかけに手を挙げる人はまばら。
まだ、知る人ぞ知る存在のようです。
古邨は金沢に生まれ、花鳥画を得意とする鈴木華邨に師事。
海外おもにヨーロッパへの輸出用の色摺り木版画で高い人気を集めました。
海外向けの作品を中心の制作していたため、「お土産品」のイメージが強く、それが評価がなかなかされない理由にもなっていたようです。
実際、古邨は海外の人気が高く、秋華洞でも日本より海外からのお問い合わせが多い絵師です。
そのように海外での人気が先行したため、2001年にはオランダのアムステルダム国立美術館で大規模な回顧展が開かれていますが、
日本での大規模展示は初となりました。
会場では前期、後期230点がすべて入れ替えで展示されます。また、作品は季節ごとに構成されています。
古邨の魅力はその情緒あふれる写実性。
会場にいたらお子さんから「お父さん、これ水彩じゃないの?」という声も聞こえてきました。
版画とは思えないくらい微妙なぼかし。
海外のコレクターの心を捉えたのも納得の美しさです。
なお、小原古邨の名で多くの花鳥画木版画を残したのが版元・大黒屋。小林清親の光線画でも知られています。
小原古邨「三匹の鯉」
小原古邨「藤に蜂」
また、昭和期には小原祥邨の名で渡辺版画店より花鳥画を出版します。
こちらでは大黒屋での作風とは対象的にはっきりとした色調の装飾性の強い作品になっています。
小原祥邨「椿に文鳥」※こちらは展示作品ではありません。
また、豊邨の名で酒井好古堂と川口商会の合版でも少量ですが作品を残しています。
このほか月岡芳年の浮世絵を出した「滑稽堂」からの作品も展示されています。
古邨についてはこちらの展覧会は11月4日まで。
また、今週末10月7日ののNHK日曜美術館ではこの展覧会の特集が放映されます。
さらに来年2月からは原宿の太田記念美術館で展覧会が予定されています。
古邨に興味を持った方、是非チェックしてみてください。