一世一代
4月大歌舞伎は本日が千穐楽。
今月夜の部は片岡仁左衛門丈が主演の絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)。
当たり役としてこの作品を演じできた仁左衛門丈ですが、
今回は「一世一代」、つまり演じ納めの公演なのです。
絵本合法衢は「大南北」と言われた四世鶴屋南北の作。
本家をのっとろうと企む左枝大学之助とかつて大学之助につかえていた無頼漢の太平次の悪役、二役を
仁左衛門丈が演じます。
悪役が主役?と思われるかもしれませんが、
享楽的色彩が強かった文化文政時代は悪役が好まれたそうです。
ちなみに仁左衛門丈はインタビューでも「善人より悪人のほうが演じていて楽しい」と答えています。
悪役、しかも二人が主役ということで、
とにかく人が殺されます。
大学之助は自分が盗みを指示した手下を欲しいものが手に入るとすぐさま口封じの為殺してしまいます。
芝居がはじまってものの10分?の出来事。
しかし、不思議に嫌な気持ちはなく、残虐美、悪の華を感じさせてしまうのです。
観る側としては、まだまだ演じてほしい、まだまだできるはず、という気持ちはあるのですが、
そこは表現者として自分の納得する最高のものを見せたいという美学があるのでしょう。