秋華洞スタッフブログ

日本の古美術・近代絵画を軸に、浮世絵、古典籍、その他書画骨董。茶道具、西洋美術品も扱います。

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勧進帳

   

歌舞伎の中でもっとも有名な演目を一つあげるとしたら、

「勧進帳」を選ぶ方も多いでしょう。

勧進帳は能の「安宅」を歌舞伎に取り入れた音楽劇で

七代目の團十郎が歌舞伎十八番の一つに制定し、

天保11年に初上演されました。

その後九代目の團十郎によって一つの型が作られました。

こちらの浮世絵は明治20年4月、井上馨外相の東京麻布鳥居坂の屋敷に明治天皇、皇后両陛下を迎え、

九代目市川團十郎、五代目尾上菊五郎、初代市川左團次らが「勧進帳」を演じた際のものです。

 

周延「高貴演劇遊覧ノ図」

この出来事は歌舞伎の歴史の中で大きな節目でもあるのです。

といいますのも、今では「歌舞伎」を敷居が高いと思われることも多いものの、

当時は歌舞伎は庶民の娯楽で、

天皇が歌舞伎をご覧になるということは

歌舞伎自体の地位向上に繋がり、関係者が熱望していたことだったのです。

そしてその「勧進帳」を家の芸として受け継いできたのが、

松本幸四郎一家、「高麗屋(こうらいや)」です。

七代目の幸四郎は生涯に1600回以上演じ、「弁慶役者」とも言われました。

今月の三代同時襲名披露で二代目松本白鸚を襲名した九代目はこれまで1100回以上演じています。

また、襲名披露で十代目が演じるのも「勧進帳」の武蔵坊弁慶。

幸四郎の息子である新市川染五郎が義経を演じます。

染五郎さんの一番の憧れの役がやはり弁慶なんだそうです。

二代目白鸚さんは前回の三代同時襲名の際にお父様の八代目幸四郎さんから

襲名のめいは名の字を書くが「命」のめいだと伝えられたそうです。

新幸四郎さんの弁慶は家の芸や歌舞伎の歴史を背負っているような

そんな迫力を感じました。

秋華洞では明日から高麗屋三代襲名記念「役者絵展」を開催します。

期間: 1月12日(金)~1月26日(金)

時間:10:00~18:00 会期中無休

高麗屋ゆかりの浮世絵ほか、松本金太郎改め八代目市川染五郎さんによる絵も展示します。

入場無料です。お気軽にお越し下さい。

http://www.syukado.jp/feature/2018/01/yakusha-2018.html

 

 

 

 

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