吉田博展
明治、大正、昭和にかけての風景画の第一人者として活躍した「吉田博」の展覧会に行ってきました。
会場の千葉市美術館は千葉市中央区役所と同じ建物の中にあります。
吉田博というと川瀬巴水と並んで近年「新版画」の作家として人気がありますが、
水彩画に感銘を受け、洋画から画業をスタートしました。
主に風景画を描き、アメリカで自作を売って生活の資を得るなどしたあと、太平洋画会や官展を舞台に活躍を続けました。
吉田が好んで描いた画題は「山」。実際に高山に登り、新たな視界から作品を残し「山の画家」といわれています。
こちらは「カンチエンジャンガ 午後」です。
吉田博は昭和5年11月、インドに旅立ちました。
旅の最大の目的は、このカンチエンジャンガ(ヒマラヤに次いで高い山)を描くことでした。
ここからの日の出を晴天下で見るため時期を選び、予定通り雲ひとつない日の出を堪能しました。
ダージリン郊外にあるタイガー・ヒルの物見台で一日を過ごし、この午後の様子の他に、
朝焼けの山並み、日中の日向の白と日陰のコバルトが交差する3点を発表しています。
吉田の版画の中で人気が高いのがこちらの帆船シリーズです。
吉田博「瀬戸内海集 帆船 朝」
大正10年に吉田は帆船三部作を版元渡邊庄三郎の元で制作しますが、
関東大震災で版木のすべてと作品のほとんどを失います。
こちらは私家版として再度挑戦したもので、時間のバリエーションを6つに増やしています。
吉田は舟を借り切って、移り行く光の様子を写生したそうです。
同じく瀬戸内海集の「光る海」
ダイアナ元妃が自ら求め、執務室の壁に飾っていたことでも知られています。
吉田博は版元からの発注ではなく、自ら彫りと摺りの研究を重ね、常に職人のそばについて指示を出す
私家版にこだわりました。
マージンに摺られている「自摺」は自ら監修して摺らせたという意味です。
今回の展覧会では生誕140年を記念し、版画のみならず油彩の代表作、初公開の写生帖などの展示もあります。
出口では記念撮影スポットも。
千葉市美術館では22日までですが、
続いて福島県郡山市、福岡県久留米市(吉田博の故郷)、長野県上田市、東京と巡回します。
ぜひ、足を運んでみてください。