井上邸での歌舞伎
今日ご紹介するのは当時の外務大臣、井上馨邸での
明治天皇による天覧歌舞伎の浮世絵です。
周延 「高貴演劇遊覧ノ図」
明治20年4月、井上馨外相の東京麻布鳥居坂の屋敷に明治天皇、皇后両陛下を迎え、九代目市川團十郎、五代目尾上菊五郎、初代市川左團次らが「勧進帳」「高時」などを演じました。
この出来事は歌舞伎の歴史の中で大きな節目でもあるのです。
といいますのも、今では「歌舞伎」を敷居が高いと思われることも多いものの、
当時は歌舞伎は庶民の娯楽で、
天皇が歌舞伎をご覧になる(天覧歌舞伎)ということは
歌舞伎自体の地位向上に繋がり、関係者が熱望していたことだったのです。
ただ、この浮世絵には少々フィクションが描かれています。
この浮世絵では天皇皇后両陛下が一緒に観覧したように描かれていますが、
実は26日に観覧したのが明治天皇、皇后は27日だったそうです。
いずれにしてもこの出来事は
歌舞伎俳優の社会的地位向上は勿論のこと、
歌舞伎が日本を代表する文化であるという認識を強める大きな役割を果たしました。