凧市と是真の出世作
9日、東京都北区の王子稲荷神社に行ってきました。
こちらでは、初午と二の午の日に凧市が開かれるのです。
火事が多かった江戸時代は風を切る「凧」が
火伏せに効くとされ、以来毎年凧市には
縁起物の凧を買い求める参拝客でにぎわいます。
神社の参道200メートルほどは露店で埋め尽くされ、
大勢の参拝客にまっすぐ歩くこともできないほどです。
実際の境内は結構こじんまり。
神社で火伏の凧を売っているほか、いくつか境内にも
凧を売る露店がありました。
また、王子稲荷神社では「御石様」が祀られていて、
その石を持ち上げ、
軽いと思えば願いがかない、
重いと思えば、願いがかなうまで時間がかかる
という言い伝えがあります。
ちなみに石は2種類ありまして、大きいほうは女性が持ち上げるには
難しそうです。
でも、撫でるだけでご利益があるそうですから、ご心配なく。
そして王子稲荷神社といえば、この浮世絵。
「名所江戸百景 王子装束ゑの木大晦日の狐火」 広重 (参考作品)
大晦日の夜装束を身にまとい、
狐たちが榎の木のもとに集まるという言い伝えを描いたものです。
資料館にも大きな狐の張子が展示されていました。
さて、この日王子稲荷神社を訪れた理由はもう一つ。
初午と二の午に日だけ、
重要文化財である柴田是真の「鬼女の図」が公開されるのです。
「鬼女額面図」 柴田是真
天保11年、是真三十四歳の作品です。
当時天保の改革で砂糖販売の既得権をとりあげられてしまった「砂糖元売商組合」が
願掛けのため奉納したもの。
平安時代の武将渡辺綱(源頼光配下の四天王)が鬼神と戦って腕を切り落とす。
この図は後日、綱の伯母に化けた鬼神が腕を奪い取り、逃げ去る瞬間を描いています。
是真の出世作で同じ画題を数点残しています。
息を呑むような、必死の形相です。
次の公開は二の午、21日(木)です。