一足早くお正月です。
その、一足早いとは「歌舞伎」の世界でのこと。
毎年11月に人気役者が勢揃いし「顔見世(かおみせ)興行」として、
1年の始まりを告げるのです。
(現在、京都南座の顔見世は12月)
なぜ、そうしたことを行うのかというと、
江戸時代、役者は劇場の専属として年間契約していました。
その1年の始まりが11月。
顔見世は各劇場が
「今年はこうした役者でお贈りしますよ」というお披露目だったのです。
11月のため、よく野球の「ドラフト」に似ているとも言われています。
さて、その顔見世興行に先日行ってきました。
昼の演目は「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき」。
親子の情愛を描く上方の名作で
これまで何度も上演されていますが、
物語のキーパーソンとして二人の相撲取りが出てくるのです。
「双蝶々曲輪日記」 国貞
右が濡髪長五郎(ぬれがみ ちょうごろう)で大関。
(当時は横綱はなく、最高位が大関)
左の放駒長吉(はなれごま ちょうきち)は素人相撲のスターです。
二人とも名前に「長」がつくことから
「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき」になったそうです。
浮世絵でもわかるとおりは長五郎は大関らしい貫禄が、
左の長吉は血気盛んな若者らしさが出ています。
実際の舞台で市川左團次さん演じる濡髪長五郎は堂々とした
風格でひときわ大きく見えました。
真ん中奥に見える提灯に「大當(おおあたり)」とあるのが
いかにも役者絵らしいです。