秋華洞スタッフブログ

日本の古美術・近代絵画を軸に、浮世絵、古典籍、その他書画骨董。茶道具、西洋美術品も扱います。

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北斎とその時代〔後期〕晩年の境地「冨嶽三十六景」

   

以前ご紹介した太田記念美術館の「北斎とその時代」
後期は晩年に才能が開花した北斎の魅力が、余すところなく紹介されています。

〔前期〕変貌し続ける才能 はこちら

ずらりと展示された富嶽三十六景は見応え十分。

三十六景と言いますが、本当は10点追加されて46点なんですね。
数年間で断続的に刊行されており、どういった順番で出版されたかは未だ判っていません。
ただ、輪郭線の青い物と黒い物があり、黒い方が最後に出版された10点ではないかと言われています。

使っている色が少ないせいか、藍色のグラデーションが映えて美しいこと!

他にも国貞、栄泉や豊国など富士をテーマにした作品がいくつか展示されていましたが、北斎の富士は別格!でした。

驚いたのは富嶽三十六景を70歳すぎてから発表したということ。
そして富嶽三十六景が好評だったため、富嶽百景という冊子をなんと75歳で刊行!

その頃の北斎が言った言葉です。


六才より物の形状を写の癖ありて 半百の此より数々画図を顕すといえども
七十年前画く所は実に取るに足るものなし七十三才にして稍(やや)禽獣虫魚の骨格草木の出生を悟し得たり故に八十六才にしては益々進み
九十才にして猶(なお)其(その)奥意を極め 一百歳にして正に神妙ならんか 百有十歳にしては一点一格にして生るがごとくならん願わくは長寿の君子
予言の妄ならざるを見たまふべし

「私は6歳より物の形状を写し取る癖があり、50歳の頃から数々の図画を表した。とは言え、70歳までに
描いたものは本当に取るに足らぬものばかりである。(そのような私であるが、)73歳になってさまざまな生き物や草木の生まれと造りをいくらかは知ること
ができた。ゆえに、86歳になればますます腕は上達し、90歳ともなると奥義を極め、100歳に至っては正に神妙の域に達するであろうか。(そして、)
100歳を超えて描く一点は一つの命を得たかのように生きたものとなろう。長寿の神には、このような私の言葉が世迷い言などではないことをご覧いただきた
く願いたいものだ。」

バイタリティ溢れる75歳。
ようやく才能が開花してさらに勢いを増しているように感じます。
しかしこの年齢で30年先を見据え、日々努力するというのは並大抵のことではなかったでしょう。

もうアラサーだし〜… なんて思っていた自分が恥ずかしい(汗)
江戸のアラセブ いや アラエイ 恐るべし、でした。

後期は7月25日までです。
結構混雑していましたよ。お早めに!

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