絵画買取の鑑定ポイントとは?
絵画買取に際して、どのような点を鑑定士が見ているのか、ここで少し説明してみましょう。ひとくちに絵画といっても、多くの種類がありますが、ここでは額装の絵画、それはすなわち、油彩画、日本画、版画などについて査定のポイントについて解説してみます。
1.箱
絵画の場合、絵を包む要素は二つ。
まずは箱です。絵画を包む箱はその絵画が売られたときにどの程度重要として扱われたかを示す役割があります。特に日本ではその傾向が強く、きちんとした箱に入っているケースが多いです。
箱には最初の販売店、作家名、作品名が記してあることが多いです。掛け軸やお道具ほど形式として定まったものがないとはいえ、美しい良い箱にはいっているものは中身がしっかりしていることを期待させます。
2.外装物
日本画を額装にしている場合は、共箱と呼ばれる板切れ何同梱されており、これに作者が題名と名前を記してあります。あるいはそうしたものは省略され、絵画の裏側に共シールと呼ばれる作者と題名を記した紙が貼ってあることがあります。日本画の場合は、この作者からの鑑定と呼ぶべき要素が大事とされます。
洋画、油彩画の場合は、裏側に売った画廊のシールに作者、題名が記してある場合があります。ここにさまざまなシールや書き付けのある場合があり、真贋鑑定や評価の手がかりとなります。
裏側に何もない場合も、額装を裏蓋を外したところに作者、画題、製作年号が作者自ら記してある場合があり、鑑定の助けになります。
洋画においては、絶対に決まった形式というのはありませんが、手がかりがある方が評価がよくなることが多いと言えるでしょう。
また、鑑定証と呼ばれるものが添付されている場合があり、著名作家の場合は、この鑑定証明の信憑性が重要になります。証明自体が本物かどうか、あるいは発行人が信用あるかどうかなどの吟味も必要となります。
3.額装
日本画の場合でも、洋画の場合でも、良いものほど額装が丁寧で高価なものが用いられる傾向があります。私どもプロが見たら、どの時代のどのメーカーによるものか判断がつく場合が多いです。額装にもブランドがあり、これは一般に知られていない情報なので、重要な真贋と評価の手掛かりになりますが、贋物を作る人の中にはその辺りの事情も詳しい人がいるので、よく似た偽物の額装を作る人もいるので注意が必要です。
4.サイン
絵画作品には実は極めて多くの種類がありますが、普通思い浮かべるのはいわゆる洋画かもしれません。そして日本画。そのいずれでもないのが版画。何が大事なのか、見ていきましょう。
油彩画の場合、画中にサインがあるかどうかは重要です。日本画でももちろん同様ですが、油彩画の場合は、海外のものでも日本のものでも、イニシャルやアルファベットによるものが多いです。日本画の場合は落款とよばれる漢字の署名と印象が押してあることが一般的です。形式は何にせよ、これは誰の作品か確認するとともに、真贋、時代などを判断する手がかりになります。
多くの有名画家の場合、このサインがどうであれ、査定実行者の真贋の判断がどうであれ、決められた鑑定人、あるいは鑑定機関が存在しますが、現役作家の場合や、鑑定執行が未整備の場合は、あくまでも査定人の判断で真贋が判断されることになります。評価金額が大きい作家の場合は、そのあたりはおおむね整理されていますが、稀に曖昧な人もいます。
5.画題など
さて、絵の中身を見ていきましょう。
絵を見る場合、こと金額的評価ということになると、「芸術的評価」では必ずしもなく、需要が強いかどうかで決まってくる面があります。大山忠作なら「鯉」、後藤純男なら「御城」など、東郷青児なら「女性」作家にはそれぞれ「得意の図」がありますが、その典型の図の方が評価が高い傾向があります。これは芸術的観点から言えば、作家の自衛・堕落・マンネリ化を招く危険な法則なのですが、一度作家のモチーフイメージが強くなると、例外的モチーフが人気がなくなる、という傾向は否応なくあるので、難しいところですが、現実です。ただ、あまりにルーティン的に多く同じモチーフを描き続けると、描いていた時代はよくても、何十年もしてから、そのマンネリぶりが逆評価になることもあります。同じ図柄を何図描いても、新鮮なのか、あるいは退屈なものになるのかは、作家の普段の心がけ次第と言えるでしょう。ピカソのキュビズムによる女性は数多くありますが、誰も「マンネリ」と呼ぶ人はいません。
さて、典型的な図であれ何であれ、その作家「らしさ」と美しさが整っていればいるほど評価が高いことは当然のことです。
絵画の評価を決めるのに、何より大事なことは、その作者にしかない際だった特徴があることです。そしてその特徴は、単独の作品ではなく、その作家が残した作品群に、際立った特徴があることです。
作者がよく知られていなくて、「一点」だけ素晴らしい作品があったとしても、それは評価の対象とはなりません。作家の作品世界があり、そのなかで優れた作品があると、その作品は驚くべき評価になります。ピカソも、東山魁夷も、斉藤真一も、まったく文脈は違いますが、その人ならではの「文脈」があることが大事です。最高の評価の作品については、ピカソは数十億円、東山も数億円、斉藤真一は百万円前後と、価格帯は違うものの、その定評というのものに、大きな意味があります。それがいわゆる「市場評価」というものでもあるのです。