銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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稀代の美人画コレクター福富太郎さんのキャバレー葬

   

福富太郎さんが最近お亡くなりになった。

お通夜、告別式は家族葬でおやりになったが、あらためて「キャバレー葬」をやるということで、お招き頂いたので行ってきた。

素晴らしかった。

キャバレー葬、といっても、福富さんが創業したキャバレー「ハリウッド」を会場に、ホステスさん抜きでしめやかにやるのかな、と私の貧しい想像力で思っていた….が、裏切られた。

北千住のお店の一階のエレベーター入り口では、いつもの通り「いらっしゃいませ!」の元気なボーイさんのおふたりの呼び声。

<あれ?何かの間違いかな?>と思い「あのう、今日は福富さんのお葬式。。。ですよね?」と尋ねると「はい、それ以外の方は今日はお断りしております。」

 

エレベーターで上階に行き、ハリウッド店内に入ると、いつもどおりの昭和レトロな感じのお店に、お客さんと、いつものお姉さん方で花盛り!

派手なライティングに、生演奏の歌謡ショウ。気圧された。

【写真は当日のモノにあらず。ハリウッドHPより】

献花台に一輪花を添えたあとは、ちゃんと要領よく僕の知り合いのコクレクターさんや仲の良い画廊さんの席にご案内いただいた。ちょっと名乗っただけなのに。。福富さんにも説明したこと一度もないのに故人をめぐる人間関係もご存知なのか…。さすが一流の客商売だ。

お客さん、というか参列者には、美術館学芸員、芸能人、スポーツ選手、テレビプロデューサーなど、美術関係者と往年のテレビスターが入り混じり、福富さんの多彩な交流関係がわかる。

ホステスさんたちも何時も通りの明るい対応。

この日、はじめて奥様にお会いした。「勝手な人だったからねえ」など愚痴=ノロケを拝聴する。明るい方だった。今はご家族で立派に素晴らしいお店の経営を続けられている。

 

前もコラムに書いたように、福富さんは、僕のいわば「先生」。
この画商という仕事を始める前に、数冊の著書を読んで、コレクションの愉しみ、美人画の面白さを学んだ。
思文閣時代のウチの父や、その部下の加島さんの大事なお客様でもあった。

僕も時々、このキャバレーに隣接する事務室に呼ばれて商売をさせてもらった。

このキャバレーの従業員の方は、みな古い。ホステスさんも、六本木では多分無理な年齢層だ。しかし、託児所などが充実し、独り身子育て中の女性にはとても働きやすい職場だと聞く。ホステスさん、従業員が終生働けて、お客様にとっては憩いの場所になる、この場所は、福富さんの「現実主義」と<愛情>が絶妙にミックスした場所なのだ。

そして、亡くなってからも、こうして人を楽しませようとする福富さんの機知に、脱帽した。

また、誰か連れて行こうかな。

福富太郎さん、永い間、父、加島さん、私と二世代(三世代?)にわたり、本当にお世話になりました。ご冥福をお祈りします。

 

(以下、参考リンク)

ハリウッド トップページ

ハリウッド トップページ

Source: www.hollywood.ne.jp/

第34回 福富太郎(その四)稼いだ金はすべて名画に費やす—もう一つの顔、「絵画コレクター」(福田 和也)

第34回 福富太郎(その四)稼いだ金はすべて名画に費やす—もう一つの顔、「絵画コレクター」(福田 和也)

福富太郎さんは、絵画のコレクターとしても名が知れわたっている。そのコレクションの白眉とされているのが、美人画作家、岡田三郎助の傑作『あやめの衣』であった。

Source: gendai.ismedia.jp/articles/-/35879?page=2

絵を蒐める―私の推理画説 単行本 – 1995/2

 

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