London Shunga その2
と、いうことでロンドンの大英博物館、大春画展レポートの続きである。
ブログシステムの不調で更新が遅れてしまった間に、ロンドンでの展示は終わってしまったそうであるが、「巡回展」日本開催への願いも込めてレポートを試みたい。
さて、最初に挙げるのはこの春画展でゲットした図録である。電話帳の分厚さと黒々と光る弾丸のような精悍さ、そして空港で重量オーバーの超過料金を取られる重さを誇るこの図録。
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このどデカイサイズの図録が今回の関係者の膨大な努力の象徴であろう。たんなる「エロ」と誤解
する人がおそらく大半の日本人なのではないかと思うが、春画というものに江戸時代の文化、思想、成熟、爛熟、ユーモア、政治、風俗、海外交流、家族制度、経済、服飾などなど様々な情報が詰め込まれている事を愚直に説明しようとしたこの図録に感服しない読者はいないのではないか。
正直言うと、実は「この図録、意外と面白くないよね」と、いう意見も聞いたのは聞いたが、彼は恐ろしく専門的知識がある人である。つまり、春画と浮世絵の奥深さはこの分厚い図録には収まりきらない、もっともっと奥行きのある面白いもんがあるぜ、と言いたいのである。春画の世界をこの展示と図録見ただけで分かった気になっちゃあ困るぜ、ということなのであろう。
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今回のロンドン大英での展示は、実は月間芸術新潮の特集にかなり要領よくまとめてある。概要を知りたければそちらを参照されたい。ここでは、実際に行かなければわからない情報を主に述べてみたい。
会場に入って、あ、流石、と思う。歩いてジワジワ、なるほどなあ、と感心する。
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まず、春画が云々という前に、浮世絵とは何か、背景となる日本の江戸期とはどのようなものか、が簡にして要を得たガイダンスがあることだ。この大英博物館は、エジプト文明や古代ローマ文明など、古えの人間の暮らしをつまびらかにして「世界」を感じる場所である。浮世絵、春画を「美術品」ましてや「商品」という文脈で見るのではない。春画を通して見えてくる日本の時代を、人の暮らしをイメージできる展示になっている。
具体的に、着物が2点ほど会場に吊るしてあるのが印象的である。われわれ浮世絵商は、春画のキモが豪華絢爛かつ精緻に描かれた和服の柄と布のシワであることは知っているが、しかしでは着物の柄やそれを着る女性(ないし男性)の家柄地位立場などを本当によく知っているわけではない。なんとなく知った気になっているだけである。しかし、その着物が、事実その時代の人々が着ていたという事を思い出させてくれる。
笑わせてくれたのが、江戸の「大人のおもちゃ」ともいうべきモノたちの実物が展示されていたことだ。よく春画に出てくるのは知っていたが、いや本当にあったのですね。こんなの集めてきた担当者の情熱に感服。
主催者から見て、来場者数が多かったのか少なかったのかはわからないが、かなり幅広い民族、国籍、男女、年齢、の人が来ていた。そしてわざわざ訪れた日本人も少なくないように思う。だって春画を見ようと思ったらここまで来ないと見れないんだもん、ねえ。
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