京都に菅楯彦展見に行ってきました。池永と阿部出品。
京都に池永と阿部が出品しているコンクールである菅楯彦展に行った。
この菅楯彦展、そもそも鳥取の倉吉博物館というところが、この地域出身の大阪画壇の風俗画家「菅楯彦」を顕彰しつつ、新しい作家を見つけるという趣旨の、コンパクトだが、きらりと光るコンクールである。
何故きらりとするかといえば、この審査の候補が推薦制だからと言えるだろう。一般公募展では、あまりに応募の範囲が広すぎるが、この賞は、ある程度の「意志」で絞り込まれた、おそらくは未だ無冠の実力作家が集うことが出来る。
「若手」を意識的に育てる場というのは色々出てきていると思う。たとえば東京美術倶楽部の青年部が主催する「ART AWARD X」だ。だがあれにも年齢制限がある。私どものが推す阿部、岡本、池永のように、発表の機会が20代になかった作家には、ある程度の年齢での区分けが足枷になる。50でデビューしようが、60でデビューしようが、実力があるものはあるし、ないものは、ないであろう。そうした画家におおきな舞台を与えてくれる機会は、実は貴重である。
で、展示されている数十点の「日本画」を見た。比較的レベルが高い、といっても差し支えなかろう。なんでこの人が、というのもないではないけれど、かなり熟練した表現者が多い。
気になっていたのは、審査員のメンバーと、その姿勢であるが、現場に行って、カタログをいただいたら、なかなかの人たちが、なかなかの見識で選んでいることがわかって、ちょっと感心した。草彅さんや野地さんなど、若手作家育成には一家言ある人が、選んでいる。カタログに載っけている寸評も、なかなか率直で、当を得ている。大賞から佳作四席までの結果に自分が納得しているわけでもないが、自分は一応関係者であるので、あまりつべこべ言うわけにもいかない。ともかくも、池永が実質「次席=二位」である「佳作一席」に選ばれたのは幸である、といいたい。阿部清子は惜しくも選に漏れた。
池永作の繊細さと完成度は審査員一同舌を巻いたようで、上位に来たのは当然とも言えるが、同時にレトロな世界に閉じている、という印象も与えたようで、心配していただいている。池永は文体も復古調だし、作品も何か懐古主義的な誤解を与えているかもしれない。しかし何か「過去」への憧れでもって何か「昔」に執着しているかと言えばそういうわけでもない。むしろ「時間」を越えたところにある男女の蜜月を表現しているのだ、と観る者に強く伝わる「仕掛け」あるいは「説明」が必要なのかもしれない。
ところで、今回のエントリ作家のなかで、もっとも気になったのは、「竹林」さんの作品である。赤ん坊がおもちゃを見上げている動作を描いたもので、丁寧な描線、落ち着いた色使い、そして溢れる愛情を感じさせる作品であった。彼女は池永の盟友だと思うが、しっかりとした地力を感じさせる。審査でも受賞候補に残ったらしい。このひとは今回は野地さんの推薦でのエントリーであった。描きたいものが明白になれば、心に響く力を蓄えている人ではないかと思った。
ところで、菅楯彦作品は弊社でもしばしば扱う。非常に絵のテクニックが巧みで洒脱で、縁起物をよく気軽に描く、いかにも庶民派の大阪作家であるが、あまり知られているとは言えない。だがもっと知られてよい作家である。この展覧会の機会に、菅楯彦への光が当たることも望みたい。
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