銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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「アートコレクター入門」と節税

      2024/08/05

『アートコレクター入門』を上梓してから5ヶ月ほどが経ちました。

みなさんに読んでもらってるのかどうか、ちょっとわからないのですが、最近は図書館で見つけた!という声をいただいておりまして、例えば下記のツイートを拝見しました。笠間市の図書館さんです。

https://x.com/tomobe_klib/status/1796058963433443637

#ミテミテ図書_新着資料】 ◆死んだ山田と教室(金子玲介/著 #講談社) ◆コンサバター 5(一色さゆり/[著] #幻冬舎) ◆理学療法士が教える伸びるだけ!(藤田日菜子/著 #創元社) ◆アートコレクター入門(田中千秋/著 #平凡社) など。順次受入をします。どうぞご利用ください。 #友部図書館

図書館に入るということはずっと読み継がれるということだとしたらありがたいことです。

さて、この種の本では、多分珍しいと思うのですが、税金のことについてやや詳しめに書いています。いま、アタクシどもは日本の美術税制を巡り調査、勉強して国にあたらしく提案する、ということを構想しているのですが、そもそも美術を巡る税制ってあまり皆さん知られていないのですよね。実は、考えるべきトピックは非常に多いです。次に箇条書きにしてみましょう。

1.消費税の問題 美術に「消費税」ってなじむの?税率はこのままでいいの?
2. インボイス制度の問題 中小零細企業である「画廊」「アーティスト」に負担がかかるけどそれでいいの?
3.譲渡税 領収著がないと原価は5%とされる!しかも他の所得に合算。
4.相続税・贈与税 なんと譲渡税と二重課税される場合が
5.寄付税制  寄付しても節税されにくい複雑怪奇な仕組み
6.輸入消費税 「とりあえず展示」に莫大な一時金

などなど、もうね、諸外国に比べるとキビシーイというか融通が利かないというか、美術品を集めるのは犯罪!とでも言いたいのかと思われる税制が存在します。これですね、実は戦前を考えるとスッキリします。

1.消費税・・・なし。
2.インボイス・・なし
3.譲渡税・・なし
4.相続税・・日露戦争あたりまでなし
5.寄付控除・・不明
6.輸入消費税・・なし

ま、要するに何にもなかったんです。三渓園とか、三井の益田さんとか、五島美術館とか、根津美術館とか、立派なコレクションは、今みたいに厳しすぎる税制のない時代に築かれたものですね。みなさん、金持ちの話だから、関係ないや、と思われてませんかね。でも税金は厳しすぎると、お金を作る仕組みもままならなくなります。それは経済全体にも言えますが、日本のこれからを考えたら、美術もおおいに発展していくのって、みんな元気になりませんかね?

さて、もうひとつここでトピックを出します。それは「減価償却」です。

私たち美術商と、政治家や役人の方が集まって、日本の美術を活性化するために知恵を絞って美術品が「減価償却」できる、と決めたのが2013年。それ以来、100万円未満のアートは、減価償却できるようになったのです。

ゲンカショウキャクって、会社を経営されている方以外はあまりなじみのない言葉かもしれませんね。美術品って普通は「資産」なので、50万円の絵とか彫刻買っても「経費」とは見なされず、いわゆる節税ができなかったものが、一点100万までは「経費」にしていいよ、という通達が出たのですね。

これ、若い方の作品、最近みな値上がりばかり話題になりますが、平均すると下がるんですよ、実は。まあ僕らは場合によって「上がるよ」とか「下がるよ」とか言ってるのでなんだか紛らわしいのですが、普通にその辺で絵を買って平均すると下がります。それは。「投資」として「儲かりそうなもの」だけ選べば別ですけど。

でもね、「儲かるかどうかわからない」ものに投資してくれる人がいないと「儲かるもの」も出てこないのです。それは、どのジャンルも同じですね。

そのかわり、若い人の絵を買ってくれた会社には、その年の利益から絵の代金の一部を控除していいよ、というルールなわけです。

欠点は、ほとんど知られていないことです。これ適用されるケースはかなり多いのですが、たぶん、使われているケースはそのうち3割程度じゃないでしょうか。

これ、僕はワクを増やしていくべきだと思っています。結局ですね、減税をしていくことが景気をあげて、税収を増やすのです。日本のスターは、今、村上、奈良、草間と口をそろえていいますけど、チャンスの間口は増やした方がいいのです。

ちなみに、諸外国と税制について比較した文化庁の調査によると、日本ほど税金とられまくる国は他にありません。一般論としてもそうだし、美術についてはなおさらです。ああ、なぜこの国の美術商になったのだろう。

でもね、よくしていこうじゃあ、ありませんか。

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