銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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リン・イーロン=林義隆 について

   

秋華洞では、今週から Imaginary Green という展覧会を始めます。原宿じゃなくて銀座の方の秋華洞です。

今回、国内外の6名の作家が集結しますが、共通して「植物」をひとつのテーマとします。

https://www.syukado.jp/exhibition/imaginary-green/

「植物」といっても、花だの木だのを描いて下さい、と指定したわけではありません。植物とは、私達の営みの中心にあり、下地にあるものです。私達や動物たちが呼吸ができるのも、食べるのも、地球が美しいのも、みな植物のおかげです。そうしたことも全て含めての「植物」の存在、それをどう画題に生かすかは、作家に委ねました。

 私どもの企画に初めて参加してくれた台湾のリン・イーロン(林義隆) が出した「答え」はこの展覧会を象徴するものでした。彼は私達の質問にこう答えました。

問:今回の出品作品に「植物」をどのように取り入れていますか?

私の作品において、個々のイメージや情景は、イメージの再現ではなく、時間と観察によって作られている。 私にとって、作品に登場する植物は単なるイメージではなく、生と死の循環的な関係を表しています。 地球上には、私たちが定義しているように約40万種の植物が存在し、私たちが知らない植物もまだまだたくさんある。

彼は台北芸術大学院の版画科を卒業していますが、版画に加えて、陶器も数多く製作しており、そのいずれもが非常に印象的です。

版画作品は、どこか未知の文明が残した宇宙観を表したもののように見えて、緻密です。

 陶器は動物のように見えますが、森の精気を吸い取ったある種の妖精のようでもあり、舟越桂の人物像のように、シリアスでリアルでありながら、どこか超自然的なものを感じさせて、そして、シンプルです。

 平面作品と立体作品を呼応しているものの、単に平面を立体化した、という感じではなく、別々の特徴を持っています。彼はそのことを次のように表現しています。

 各作品の解釈について:

私の創作において、平面作品と立体作品は相互に影響し合い、必要不可欠なものである。 私の創作において、平面作品と立体作品は相互に影響し合い、なくてはならないものである。 また、平面作品と立体作品を用いて、私が認識する世界を表現している。

 絵画、版画、陶芸はすべてパズルのピースであり、唯一無二のかけがえのないものです。

 鑑賞者が知りたいと思って作品に向かうのではなく、鑑賞者が唯一無二の体験ができることを願っています。 お気に入りの詩を読んだり、美しい木を偶然発見したりするようなもの。私にとって、これこそが作品に近づき、作品と出会う最良の方法なのかもしれません。

林義隆2023「太陽系(夜)」

上記は彼の版画作品、下記は彼の陶器の作品です。「植物」は直接的には描写されていませんが、森の精気を浴びた動物たちの魂を写し取ったような作品に見えませんか?


というわけで、木曜日からの展示をお見逃しなく!

  • 展覧会情報
  • Imaginary Green
  • 会期 2024年4月18日(木)〜27日(土)
  • 会場 ぎゃらりい秋華洞
  • 時間 10:00〜18:00
  • 備考 会期中無休 入場無料

https://www.syukado.jp/exhibition/imaginary-green/

〈出展作家〉
ファン・ピン・トン(黃品彤)、リン・イーロン(林義隆)、ディー・チン(狄青)、 チン・ペイイ(陳 珮怡)、沖綾乃(オキ アヤノ)、岡本東子(オカモト トウコ)

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