福富太郎の眼と私
2021/04/23
福富太郎さんのコレクション展が明日から東京ステーションギャラリーで行われる。
ここでの目玉商品がなんといっても、北野恒富の道行き心中ものの屏風だ。北野恒富は美人画で有名だが、その有名さはこの作品に負うところ大だ。恒富の力とその限界も福富太郎さんはよく知っていた。
福富太郎さんは現物の女を集めてキャバレーという形で商売するのが仕事だった。だが、本人と会うと、僕はちっとも女なんか好きじゃない。僕の店なんか自分だったら行かないね、なんてうそぶいていた。そのくせ、色々事情(わけ)ありの女達の職場を万全に用意していた。託児所が併設されているキャバレーなんて今どきもうないのではないか。女達に愛情があったからこそ、もう女なんて面倒くさいというちょっとした諧謔を口にしたのだろう。僕が元気な福富さんとお話したのは結局たかだか10年くらいだった。
たぶんもっと沢山お話したのは、父であり、父の弟子になる加島さん(彼の息子が今加島美術というのを率いている)や、あと多分●動画廊さんとか●明画廊さんだっただろう。
思文閣から独立する形で秋華洞をオープンするとき、親切な紹介文を寄せてくれたのも福富さんだった。
福富太郎様 (キャバレー「ハリウッド」創業者)より
「掘り出し物が出る店」
https://www.syukado.jp/about/recommend/
また、創業まもない頃インタビュー記事も作った。
秋華洞丁稚ログ(日記)h
http://blog.livedoor.jp/syukado/archives/50604249.html
美術品蒐集の達人に聞く!(レポート)
キャバレー「ハリウッド」創業者 福富太郎氏 | ものさしをはっきり決めよ (2006-10-03) https://www.syukado.jp/interview/vol002/
https://www.syukado.jp/interview/vol002/
この記事の中で、福富さんはまだ若い僕に興味深いことを沢山伝えてくれている。その頃の僕は十分にそれらを理解していたとは言い難い。
「お客に儲けさせよ」「お客の絵をけなしては駄目だ。褒めろ。」「権威なんて関係ない」
福富さんが長年コレクションをしていてわかったことを、かんたんに受け取ることはできない。このインタビューを10年以上を経て読んで、あらためて勉強になる。コレクターが何を求めているのか。そこを考えなければいけない。
インタビューもあるように、美人画と戦争画が福富コレクションの軸であった。なぜ美人画なのか。
それは彼の著書『絵を蒐める』に詳しい。
テーマを持った作品コレクションのいいところは、作品が高くなるとか安くなるとか、有名とか有名でないとか、一過性の評価ではなく、歴史という縦軸、ジャンルという横軸を串刺しにして、芸術の本質を見ていくことができるということだ。今はバブルとも言われる現代美術ブームだが、コレクション人生は長い。コレクションには生き方が現れる。尊敬される生き方とはなにか。尊敬されるコレクションとはなにか。
この展覧会で、そんなことも、みなさんと一緒に考えたい。
動画で語る「福富太郎の眼」田中千秋Youtubeより
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