明日から始まる陳珮怡(チンペイイ)個展開催にあたって
チン・ペイイ(陳 珮怡)個展にようこそ。
陳珮怡の個展はこれで二度目になります。池永との二人展、日本での画集刊行を経て、私どもでは彼女の作品の扱いを本格化する予定です。
彼女の猫絵の強みは画面の圧倒的な強度です。猫の毛並みと、絨毯の布の質感が精妙に描き分けられて、緊張感のある絵肌に、人の手になる「絵」というものの強さが感じられます。これは膠彩、すなわち日本画の技法で描かれていますが、いわゆる「日本画」では出せない強さがあります。
猫といえば徽宗皇帝の「猫」が有名です。まがまがしい存在感を放つ徽宗の猫。あの密度と存在感を描き出す強さが、彼女の絵に生きているようにも感じられます。
ところで、彼女の絵の特徴は、猫を「可愛らしいもの」という定義とか観念から解き放っているところにもあるでしょう。猫と共に生き、日常・猫・芸術が一体化した澄んだ暮らし。そのなかでしか見えてこない、猫たちのありのままの姿。そこには、純度を極限まで研ぎ澄ました絵画世界があります。
SNSや画集で彼女は自らの暮らしを写真で公開していますが、そこで呟かれる彼女の言葉の美しさときたら。台湾映画の雄・侯孝賢監督映画の言葉たちの美しさをも想起させます。
珮怡(ペイイ)は、絵の具の粒子の発色について研究を怠らず、画面にもたらす効果を試し、時折その成果をネットにも公開しています。
どこまでも岩絵の具の粒子の輝きを愛で、一方で、美しい漢語を選びながら、彼女は、たんに猫や風景のみならず、人間と世界が現在まで刻み続けてきた心の世界の悠久を丁寧に編んでいるように思われます。
心乱れたとき、猫は彼女に無言で語りかけ、彼女は我を取り戻すといいます。静謐な絵画世界ですが、私が察するに、画家本人は激しく、情熱的な性根を持っています。心から苦しいことの数々も、彼女の身の上にはあったことでしょう。その世界を透明にし、澄んだ芸術に昇華しているのが、彼女と4匹の猫の暮らしと、膠彩の絵画なのです。
どうか、作品をごゆっくりご鑑賞いただくと共に、台中の美しい風景に暮らす彼女の声、言葉、猫たちの暮らしの画像なども併せてご覧いただいて、「美術」と「ひと」が共に生きてきた数千年の歴史にも思いを馳せていただければ何よりです。
展覧会の案内は下記です。
https://www.syukado.jp/exhibition/chen-pei-yi_2020/
東洋一の猫描きインタビュー
ペイイ台湾からのメッセージ
田中のペイイ動画解説その1
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