北斎不足
2019/05/18
北斎のニーズが高まっています。
ですが、品物がありません。
ぜひ、お持ちの方は譲ってくださいませ。
北斎といえば「大波」。
正確に言えば「富嶽三十六景のうち神奈川沖浪裏」。
もうね、これは「日本」の象徴でもあり、20世紀という「デザイン」の世紀の前触れでもあり、東洋と西洋の出会いの象徴でもあるという、大変な作品ですが、この作品のもっとも大きな特徴は「木版画」であること。すなわち、何百点も存在するはずだということです。
なのにですね、高い。最低でも数百万出さないと、手に入らない。
それが、ニューヨークでたまに、一億とか5千万の値段がつくと、もうですね、北斎が枯渇するわけです。今年3月のクリスティーズで、どかんと売れたことは浮世絵関係者なら誰でも知っていることです。なので、今はともかく品物がない。
私どもでも仕入れた北斎が売れるのはありがたいのですが、仕入れ困難になります。
さて北斎はなぜこんなに偉いのか。人気もあるのか。
浮世絵のコレクションを初めて一年ほどすると、誰もが気がつくことがあります。
数ある浮世絵作家のなかでも、北斎がずば抜けた才能を持つということです。
最初に気がつくこと。それは他の作家が黒と、赤、黄色、青、緑など、使える限りの色を使う傾向があるのに比して、「藍」を北斎が偏愛しているということです。僕は、浮世絵の勉強を始めたばかりの頃、どうもこの人の作品は色の塗り忘れが多い、と思っていました。あれ?色が日にあたって飛んでしまったのかな。
違うのです。狙っているのです。藍、という色をどう効果的に使うか。あるいは自分の作品をどう差別化するのか。
それと人物描写。「北斎漫画」で無数に彫り込まれた人物百態。なんといいますか、もう人間様に対する偏愛と申しましょうか、ともかく人物観察が細かく、するどい。一応同時代のライバルとも言える広重の何千倍か描写が細かい。
書くべきことはまだありますが、一冊本が描けてしまうので、ここらでやめます。
世界中の写楽を全部集めても、ウタマロを集めても、広重を集めても、たぶん北斎の合計額にはかなわないでしょう。バスキア100枚分?くらいはあるのではないでしょうか(当社比)。
そういうわけで、北斎持ちのみなさん、売って下さい。。。
田中千秋
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