銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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香港アートセントラルのこと

      2019/05/14

こんにちは、秋華洞の田中です。

ずいぶん時間が立ってしまいましたが、3月に香港のアートセントラルに出ました。「アートセントラル」とはアートフェア、美術展示のお祭りなのですが、世界的に有名でものすごく集客のできる「アートバーゼル香港」の人の流れを見込んで開かれるアートフェアです。

巨大なテントが香港の海際の公園に建てられて、そのなかでやるのですが、昨年まではなんとなく見学だけしておりました。香港というマーケットが果たして上向くか難しいのか、ちょっと判然としなかったからです。

ですが、アートバーゼル香港の熱気は、それは凄いものであることは感じていました。日本で言えば、そうですね、ディズニーランドと若冲展と先日の一般参賀と同じくらいの人気といえばいいでしょうか。

今回、私どもは突然の参加表明であったので、入るのは容易ではありませんでした。有り体に言えば、半ば断られたような中、なんとか入れてもらいました。なんだかね、拒否されると入りたくなるものです。

やってみて、今はよかったと思っています。若い画家たちと、浮世絵などの組み合わせを試みたのですが、多くの人が立ち止まってくれました。ブースの場所は入り口からもっとも遠い場所だったのですが、かえって良かったかもしれません。

話しは飛びますが、バブル時代の終わり頃、クリスティーズやサザビーズが東京でオークションをやろうとして、日本の美術業界が受け入れずに、香港がアジアのメインオークション会場になったという経緯があるらしいです(間違っていたらご指摘ください)。一般に非公開の「交換会」というシステムが中心の当時の美術業界にとっては「黒船来航」的な事だったのかもしれません。

いまや、香港はこの二大オークション会社をはじめとして、アジアのアートが一番熱い場所になってしまいました。東京は世界のアートシーンからは少し、省かれてしまった感があるのは残念なところです。あの頃、こんなにも中国が豊かになることを、そして香港のアジアと世界のハブとしての立ち位置がこれほど重要になることを予想できた人は誰もいなかったので、仕方がないことかもしれませんが、歴史の皮肉を感じます。

ただ、私達「今の世代」の日本人は、「次に」何をやるのか、真摯に、そして今までの「常識」を捨てて、考え実行する必要があるのではないでしょうか。

香港は、今年もバーゼル、そしてセントラルともに熱かったです。僕らの展示は、未熟な点もあり、全体から見れば小さなものでしたが、北川麻衣子のモノトーンの世界が中国の人たちの心に響いたことが感じられたのは収穫でした。

来年以降も、出たいと思います。バーゼル香港も射程に入れつつ。

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