バーゼル・バーゼル2018
2018/07/16
遅ればせながら、今年のアートバーゼルを見学してきたので、少しだけ報告する。
アートバーゼルは言うまでもないが、世界最大のアートフェアである。もともとスイスバーゼルで行われていたが、今はアメリカ・マイアミと香港にもその羽根を広げている。なので我々は「バーゼル・バーゼル」とこのアートフェアの事を呼ぶ。
バーゼルの中身がどうであったか。 アートを楽しむものにとって、必ず行かなければならない祭典ではあるが、例えば香港のそれに比べて著しく興味深いものであったかといえば、そうでもなかった、というのが正直なところだ。
世界最大の現代美術ギャラリー、ガゴシアン、ホワイトキューブ、ペロタン、ペースなど、流石に見応えのある展示をしているし、近代美術についても、クリムト、エゴン・シーレのデッサンやピカソなど、充実していたが、なにか強烈な新しい潮流が出てきているかといえば案外そんなこともない。むしろ日本の「具体」を巡る作品を取り上げていたパリやアメリカのギャラリーに古くて新しい、力強いものを感じた。
ダミアン・ハーストが現代アートの新たなルールブレイカーでありルールメイカーとして台頭して久しいが、彼も今回の展示でなにか新しい世界を披露しているかといえばそうでもなかった。例の薬棚をまた見せられることになる。
アジアのギャラリーは比較的少なく、欧米のギャラリーが多いバーゼルだが、本当に新しくて心奪われるものが出てくるペースは世界共通なのではないかと思われた。なので、どこの世の片隅にでも、世界で花開かれる力のある表現が生まれてきてもおかしくないのだ。
ところで、今回は数日滞在したので、サテライトのアートフェアや、バイエラー財団美術館(アートバーゼルの生みの親)など、街も多少回ってみた。アートフェアの規模もさることながら、このアートフェアを生み出した小さな町の美しさに目を奪われた。日本で言えば島根とか広島みたいな規模の場所なのであろうか、道路や路面電車、バスなどが整然と整備され、街は清潔で、ライン川は美しく、均整がとれた街だ。スイス・ドイツ・フランスの国境近くにあるこの街は簡単に隣国に買い出しに行ける。夜は物価の安い隣国のスーパーで買ったものを友達が調理してくれた。
バーゼルは小さいが、さりげないこの町に、巨大な展示場があり、年に数回(アートフェアだけではない)、富裕層を含む世界中の人々が集まって数日を過ごす。ひとりの画商が、この美しい街を特徴ある場所にした。バイエラーは、おおきな仕事をし、アートフェアを有名にし、美術商冥利に尽きる仕事を成し遂げた人だ。
この街の一角のサテライトフェアに、いつか参加できるとよいが、それが来年なのか、数年後なのか、まだわからない。