次回のカタログ52号掲載の前言葉「棟方志功と川村清雄」あるいは「日本と西洋の相克の中で」
2017/08/30
今回は思いがけず棟方志功作品の数々と、川村清雄の作品二点を手に入れる事が叶い、掲載させていただきました。
思えば二人とも西洋文化と日本文化の出会いの中で、立ち位置を模索した作家だといえます。
棟方志功は<魂>を板から掘り出した、まさに日本を代表する画家ですが、彼がゴッホのひまわりの絵に感動して絵描きを志した事はあまりに有名です。画業を意味あるものとなすために、師匠にはあえて付かず、悩み抜いて画風を確立しました。彼はもともと油彩画から出発しますが、「西洋」の真似でない、日本独自のものは何かを探して見つけたのが、ゴッホも敬意を払っていた日本の浮世絵=木版画でした。やがて彼は柳宗悦の民藝運動との出会いも得て、誰にも真似出来ない仕事を残すことになります。
川村清雄は明治時代の洋画のパイオニア。幕臣の師弟として生まれ、勝海舟の計らいで明治4年に渡米・渡欧します。帰国後は日本人としての洋画表現とは如何にあるべきかを悩みながら、抜群の描写力で和魂洋才というべき作品を発表します。
また、二人は団体展等にあまり縁がなく、その分厳しい目で、当時見られていたのも共通しています。
西洋的価値観と日本的な考え方との相克の中で生き抜いていく厳しさは、画家に限らず今も変わらない大きなテーマですが、その中で「自分」が何をなすべきか、考え抜いた彼らだからこそ、残した表現は今も私達を魅了します。
ところで、皆さんは遠藤周作原作、スコセッシ監督の映画「沈黙」をご覧になったでしょうか。江戸初期のキリスト教弾圧を描いた作品ですが、外国の映画なのに江戸の人々の描写が極めてリアルな優れた映画でした。遠く離れた文化が互いを真っ直ぐに見据えた時、本当の人間の真実を掴んだ作品が生まれるのは他の芸術でも共通していることかもしれません。
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