[読書ブログ]松谷みよ子『ちいさいモモちゃん』『ももちゃんとプー』
2016/01/08
昨日、ウチでやっている作家さんとお話した。いつもいく飲み屋さんのママは面白い人で、ナスの素揚げを頼んだら、今日はナスが逃げていったと言う。
それで思い出して言った。
そういえば「ちいさいモモちゃん」で、モモちゃんがカレーは好きだけど、ニンジンさんとたまねぎさんが嫌い、って言ったら、ふたりが泣きながら台所から逃げていって、モモちゃんが慌てて追いかけてなだめる、っていうエピソードあったね。
(注:ググったら逃げたのはニンジンさんみたい。「にげだした ニンジンさん」ていう章立てだったかな。)
若い彼女は「モモちゃん」を知らないという。
そこでモモちゃんの世界の素晴らしさと怖さの話をした。
スマホでググると「本当は恐ろしい子供の本」というコラムがヒットする。
http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2004/08/post_12.html
そこで筆者の方が下記の文章を引用していた。
アカネちゃんが生まれてから、ママは、からだのぐあいがよくありませんでした。それで、外へいくお仕事はやめて、うちでするお仕事をしていました。
そんなふうに、からだが悪いせいでしょうか、ママは目も悪くなったようなのです。パパのすがたがみえたり、みえなかったりするのです。それは、こういうことでした。
夜、パパがかえってきます。
ママには、パパの歩きかたが、すぐわかります。
ピンポーン、ピンポーン。
チャイムがなります。ママはとんでいってドアをあけます。
けれども、そこにパパは立っていません。ただ、パパのくつだけがありました。
それで、おしまいでした。
ママは、とほうにくれて、くつをながめていました。いったい、くつにどうやって、ごはんをたべさせたらいいでしょうか。くつに、「おふろがわいていますよ。」 なんていうのは、ばかげています。
ママは、しかたなくブラシでほこりをおとし、クリームをぬりました。布でこすりました。とっても長いあいだこすっていたので、靴はぴかぴかになりました。その上に、ママの涙が、一つぶ、ポトンとおちました。
つぎの朝、靴はでていきました。
読んでいるうちに、涙がこぼれる。彼女の目も、赤くなった。
作者の松谷みよ子は、なんと、昨年亡くなったという。
「モモちゃん」は、僕ら昭和40年代生まれの心に、しっかり刻みつけられている、シリーズだと思う。
あの物語に出てくる「離婚」のイメージは、読んだ幼児の頃は、さっぱりわからない。けれども、オトナの世界に、深い悲しみがあることを、なんとなく想像させた。
その深さが、あのシリーズの奥行きを支えている。
今は、あの頃より、児童文学はたくさんあり、今の若い人は、知らないひとも、いるかもしれない。
でも、是非触れてみてほしい、本である。
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