銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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LINE開発秘話を朝日で読んで思う事

   

 朝日新聞にLINEの連載記事が出た。LINEって友達との連絡を取るのにどうも便利らしい、と覚えたのは誰だっただろうか、たぶん若い人に教えてもらったと思う。んで、使い始めたのだが、今では仕事でも、画像が簡単に送れるので、メールなどよりもよほど便利である。
 もちろん、このソフトが秀逸なのは絵文字ならぬスタンプというものが送れることだ。
絵文字があくまで「文字」で、入力、変換、送信とスリーステップが必要なのに対して、このギミックはワンタッチで、すべて行える。しかもキャラクター設定が非常にうまい。
いったい、何なんだろう?とは思っていた。
 NHNジャパンとかNAVERとか聞きなれない名前の会社。。韓国の会社?ライブドアが前身らしい・・・妙な具合だなあと思っていた。
 ここでこの朝日の記事である。若い女性が音頭を取ってこのソフトを開発した、ということに驚き。そして、このソフトが「なんとなく」出てきたのではなく、社をあげて、オリジナルで世界を制覇する画期的なものを作る、という確固たる方針のもとに出てきたという事実、開発手法もユーザーに使わせてみてそれを別室で確認する、というMSや多分Appleも使っていた手法を使ったなど、半端な気合で作っていないこともわかり、非常に参考になった。(参考になるのはソフトウェアの開発手法ということではもちろんない。着想の方法と人材という点においてだ)
(LINE物語連載1および4)
 ウチの高校生の娘にもこの記事を切り取らせて読ませた。あらゆるものごとをゼロから始める気概、というものは極めて重要で、しかもそれをチームリーダーが社内横断的に進めた、という物語には仕事の様々なヒントが隠されている。
 しかし、この社員たちはそもそもライブドアの社員だったはずだ。ホリエモンとのカラミはどうなんだろう、と思っていたら、ちゃんとその取材もしていた。やるなあ、朝日新聞。うすサヨクだけではないんじゃん。
 堀江氏に対する過不足ない評価をして正しく使わず、牢屋にぶち込んでしまう日本社会にそれこそ見えない「ガラスの天井」の閉塞感を感じていたが、(これは堀江氏だけでなく、田中角栄、江副氏なども同様、出る杭は打たれる恐ろしい社会)こうして堀江氏が復活できる辺りに日本社会も捨てたもんじゃないとも思えてくる。堀江氏にちゃんと語らせる朝日にも。
 ライブドアは、その前身「エッジ」だったときに、ここ入ろうかなあ、と思っていた時期もあった会社であった。当時の「データホテル」なんてなサービス名称の付け方など、センスを感じさせるIT会社だったからだ。その後ヤフーを真似たポータルなんか作りつつ上場して、なんかオリジナリティがないなあ、と思ったりもしたが、2chのひろゆきと連携したり、画期的なブログサービスを始めたり、あるいはプログラミングの底力は他のIT会社、例えばヤフーよりもよほど優れた連中が集まっていたという。これはその業界の友人から当時聞いていた話だ。また楽天、ヤフー、ライブドアの社員が一堂に会する席で一番いきいきしていたのがライブドアの社員だったという話も聞いた。真偽の程はよくわからないけどね、伝聞だから。それとなんか読書ブログで有名なスーパープログラマーのひと(小飼 弾氏)もホリエモンのよき技術参謀だったらしい。優秀な人がヤリガイをもって勤められる会社だったとすればそれはやはり優秀なリーダーだったのではなかろうか。
 ライブドアが虚業だという批判は数年前に随分出た。売上の数字を作るためにかなり手を広げたのは事実だろうが、技術と発想力で前に進もうというベンチャー精神をより強くもっていた会社であったかもしれないのに、日本社会は彼らを一旦潰した。ホリエモンの「テレビを殺す」発言を見た時、こりゃあこの人はテレビに殺されるわ、と思ったものだが、果たしてそうなり、彼の「パンク」的な存在感は日本社会では受け入れられなかった。
 しかし、このLINEのひとつの成功は、努力は思わぬ形で実を結ぶ、という実績を示したことにもなり、様々な業種でチャレンジをやめないすべての人に希望を与えたのではないか。
 美術にホリエモンも興味持ってもらったらいいのにねえ、とこの業界の人と話しているとよく話題になる。同様に話題になるのは孫さんです、もちろん。楽天の三木谷さんもそうですけど。美術のマーケットというものは小さいし、脆弱であるから、彼らが松下幸之助や益田鈍翁なみに美術文化を本気で買ったり支援したりしたら、そりゃあ世界が変わるであろう。
 ぼくはナショナリストというか、日本人の矜持として、日本の美術や文化をガツン!と発信できる仕事をしたいと思っているが、堀江氏はどちらかというと無国籍志向らしい。もしかしたら藤田嗣治のように、じぶんを牢屋に入れた日本社会を捨てる衝動だってあるかもしれないから、日本を賞揚しようなんて発想はあんまりないかもしれない。
 また会田誠氏が著書で「紙やすり」つくってんじゃねえ、というコンサバな美術への痛烈な批判をかわし乗り越える魅力的なコンテンツを美術が打ち出していけるか、というテーマもある。
 お金持ちで日本人なら日本美術を買いなさい!と言いたいところだけど、美術に携わるものとしては、如何に魅力が深いかを、手を変え品を変えその本質を探り発信し続けていくほかない。生まれた時から美術が好き、という人もいなければまして生まれた時から東洋美術が好きという人もいないであろう。人生のどこかの瞬間に心が動くのである。そのキッカケを、地味にも派手にも、つくっていかなければいけない。
 ・・・と、美術の話に一応持って行ってみた。ホリエモンも出所しオトナになり、安倍首相も失敗に学び、リーダーとしての器を更新している。これから日本は困難なこともあるだろうけれど、やっぱり捨てたもんじゃあないじゃない!今も昔も未来も千年前も、面白い国である、と思える国にしていきたいっすね。

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