銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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朝日新聞、原発、GE、サンデル、日本の明日

   

今朝の朝日新聞、NY支局長の山中季広さんの「原子炉『マーク1』米国流に頼らず『凌原発』」という取材コラムが面白い。福島原発の1?4号機の原子炉はいずれもGEのマーク1型なのだが、これらの技術の欠陥を訴えて辞表を出した技術者と、推進する側にたった教授にわざわざ訪ねていって取材している。

このなかで、興味深いのは、根本的な改良を主張する技術者、プライデンボーさんに対してのGE社内の反応が「運転を止めれば重大欠陥とされてしまう、住民を不安にさせる、今後の原発営業ができなくなる」など、たんに会社の都合を先に立てて本質的な安全議論を避けてしまったことだ。こうなると、危機管理の欠如、というのは日本「社会」独得のものではなく、原発やエネルギーなど巨大な利権がからむ事業に根本的にともなう「副作用」である、事がよくわかる。

「公共的利益」を担う「責任」をどのような組織なら担えるのか、これは日本社会独得の議論ではなく、世界共通の悩みなのだということだろう。日本独特の宿痾もあると思うので、二つは分けて考える必要があるだろうけれども。

さて、このコラムの締めくくりは美しい。


[あれから40年、未曽有の原子力災害に遭った日本は原発の未来と

どう向き合ったらよいのか。

米国流の科学万能思想に支えられた老朽原発に頼り続けるのでは報われない。

むしろ、原発をしのぐ技術で世界の先頭に立てないだろうか。

反原発、脱原発というよりむしろ、代替エネルギーで原発を凌駕する

「凌原発」社会を目指したい。

たとえば太陽光発電では福島が世界のトップを走り、波力では宮城が、

地熱では岩手が最先端を行く。

夢見るのは、人間の知恵と力で制御できる安全な発電技術のメッカとして、

東北が立ち上がる姿だ。]


こういう作文ができるところが朝日新聞の記者の良さであろう。この最後の文面の美しさに、共感出来る人は多いと思う。原発は真面目に危険コストを考えたらもう経済的に会わない、と考えるべきではないだろうか。そのうえで、次の議論を考えたい。


それと同じ朝日新聞で、例の「正義哲学」のサンデル教授が重要な事を言っていた。原発について、「賛否両派が相互に敬意を持って、公然と討議ができれば、民主主義は深まる。」

そうだ。大事なのは「敬意」なのだ。日本でもアメリカでもどこの国でも「主張」がちがうと「党派」を作り、お互いの論理の矛盾を突くのみならず、人格攻撃や揚げ足取り、果ては暴力、という事になりやすく、結局は合理的な解を導き出すことを妨げている。

さまざまなことについて「敬意」を失わずに議論することが、もっとも大切なのである。しかるに、この数十年、原発や、軍備など、クリティカルなテーマについては、「派閥」に別れて、派閥間は交流なく、敵視しあうなかで、議論を結局は避けてしまってきた。

サンデルさんが流布させようとしているのは、こうした議論を「敬意」を持ってできる土壌、つまり「哲学」の土壌を「流布」させようとしているのだ。

もうこの方針については100%賛成。もう本当に子供の頃から一番願っていることで、そのためなら死んでもいい。と、個人的には思っている。

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