銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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公開オークション、景気が戻り?

   

かなり久しぶりに公開オークションの競りに行く。昔と比べると、大分会場が格好よくなっている。同時に日本円の他、USD,EUR,HKD,CNY,KRWなどが表示される。実質意味があるかどうかはともかく。
それにしても、いわゆる不景気にしては、よく落札されていた。中にはエスティメートを遙かに超える物も。なかでも、大観と、深水の一作品が凄かった。

公開オークションは、殆ど行かない。業者の競りと比べると、利便性が業者としては悪いのである。しかし、そんなことはおかまいなく、様々な業者さんが来ている。一般のお客様もおり、私どものお客様もチラホラ見かける。たまには行ってみないといけないかもしれない。

ある知り合いの業者さんは、日本のオークション会社の美術の評価を下げるようなやり方に問題があるという。なるほど、そういう見方も成り立つ。オークションが美術に対するリスペクトが表現される場になっているか、どうか。それは結局、経営側の発想があらわれるのだろう。またもし公開オークションが日本で問題があるとすれば、市場規模があまりに小さいなかで、品物をそろえて商売しなければいけない事にも問題があるような気がする。

だが、あれがよい、これはダメ、というのは、結局立場立場で言うことが変わってしまうこと。お客様にとっては、様々な仕組みにそれぞれメリット、デメリットがあるのだ。ただ、ともかくも、美術マーケットのパイを増やすべきだ、ということには誰もが同意する事だろう。つまり、もっと美術のファンを増やすことである。その余地は十分にあるはずである。野呂さんの「画廊巡り」や、私の銀座カタログ企画が、その一助になればよいのだが。

美術の商売をやっていてわかるのは、この業種は利益を上げるのがきわめて難しいという事だ。バブルの時は、単に在庫が勝手に高騰して経営が容易だっただけであろう。どうして難しいか。それは広告を打つ、というモデルが成り立たないからだ。たとえば缶コーヒーなら、単価が100円であっても、大量広告、大量販売が出来るが、30万の絵を売るのに、どれだけの広告が打てるか。ほぼ広告費がゼロでないと、成り立たないのは自明である。しかし何もしなければ、人がその絵を知ることもない。大量の流通を支えられる前提がない。だから美術商で企業化しているところはゼロなのである。コピー品を大量に売りさばく通販業者は、少し業界が違う。ですので、お客様は美術業界のタニマチとなって、美術をめぐる交流の場を買い支えてほしい。値切るのは「ぼりそう」な業者だけにしてほしい、と願う。

ともかくも、景気は少し上がりかけているような気がするオークションであった。

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