銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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セミナーで講演

      2016/07/09

不動産鑑定士が集まるセミナーにお招きいただき、「美術品鑑定」について、少し講演をさせていただいた。ちょっと年齢が上の方の集まりでもあり、反応が不安だったが、のちの懇親会で、案外評判が良いようだったので、胸をなで下ろす。

父の「書画鑑定マニュアル」も、かなり評判が良かったが、美術品の査定・鑑定の知識が、専門外の方から見ると、ナゾだらけで、新鮮味があるのだと思う。

思えば、「なんでも鑑定団」も、同じようなコンセプトで延々と続いていて、なぜか視聴者を飽きさせない。いいかげん視聴率が落ちても良さそうなものであるが、いくら放送が続いても、新しいネタ、新しいネタで、なお驚き、新鮮味があるのだと思う。

私どもの現場も似たようなもので、父も40年以上もやっているが、日々、初見のものが出てきて驚きがあるという。当然と言えば当然で、美術品に、ふたつと同じものはないのだ。似たようなものはたくさんあるし、初見のものも今までの経験で、位置付けを判断するのだけれど、へえ、こんなものが世の中にあったのか、というものが、良いものも、そうでもないものも、ある。

また、資産ポートフォリオとしての美術品の大事さも、ずいぶんご指摘いただいた。そう、お金持ちにとって、土地、不動産、金融資産(株式、金など)のほか、持っておくべきなのが美術品なのだが、残念ながら、戦後の日本人は、欧米に比べて、美術品に対する造詣や趣味、そして資産としての考え方の糸が途切れてしまった。例えばいまだに浮世絵の名品の大半が海外にあったりして、誰も買い戻そうなど夢にも思っていない。

家に置いてある絵画の数は、アメリカが10枚、ヨーロッパが8枚、日本はなんと1.25枚なのだという。(これは聞き覚えなので、統計を参照した数字ではない事をお断りしておく) 日本家屋から、マンション、団地、洋風建築に建て変わる変化の中で、文化を喪失してしまったことも勿論背景にある。

私は、世の中で評判の悪い「持っていたらあがりますよー」という類の話で美術品を薦めるのは好きではない。だが、実は金融資産として本当によいものを持っておけば、長く持っておくことを前提にするならば、実は非常によいものである。美術品は家やクルマのように、減っていかない。株式のように「倒産」はしない。ただ、当然、歴史的に評価が下がるリスクもある。もちろんその逆もあるだろう。

何を買うか、それは実は株式と同じく、勉強するしかない。しかも心の勉強であり、欲得ではよいものは見えない。ゴルフでも勝ちを意識しすぎると大振りしてダフルのと同じである。欲を出さずに練習してこそ、よいものが心に入る。禅の世界ですね、美術品も。

あ、また落ちが脱線した。ともかくセミナーは一応の成功で良かった。今後もちゃんと請け負いますので、もしよろしかったら要請して下さい。お役に立てそうなら、出向きます。

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