予告編に感動
中西健二という人がいる。私が映画の道を志して大学で8ミリを撮っていた頃、変わり者の先輩が大学のサークル東大「映画舎」にいて、「ピンボールの魔術師」という映画を撮っていた。わたしは「映画研究会」で、サークルは違うのだが、本気で映画を撮っている人間はきわめて少ないので、彼は少し目立つ存在だった。それが中西さんだ。
いささか変わり者だったと思うが、映画への情熱は確かな人だった。その頃、もう少し年上に中田さんという人(この人も映画舎だったか。映画日和、という同人誌を出していた。アジア映画レポートなどを中田さんは書いていた。これも質が高い同人誌だった。)がいて、この人はリングという映画を撮って後に有名な監督になるが、その頃、8ミリは撮っていなかったと思う。
僕は映画に挫折して、そのあと彷徨するが、中西さんは映画界に入った模様だが、消息はわからなかった。みた映画のクレジットは必ず最後まで見るのだが、名前を見つけられなかった。唯一、たけしの撮った最初の映画でクレジットを見かけた。
それがビックリ、昨年処女作を撮っていた。青い鳥、という映画である。
予告編をネットで見た。大変に感動した。
ショットがショットになっている。演技が、恐い。本当の演出だから、恐いのである。
ショットがショットになっているという意味は、ヒトコマずつの撮り方と、その連続(モンダージュとかいう)のリズムが、いかにも「映画的」で、リリカルというか、心地よいのである。この映画がヒットしたのかどうか、(2008年)今の時点ではよく知らないのだが、絶対本編も良いのではないかと推測した。
いじめられて死んだ子供の机を戻して、死んだはずの児童に、新任の教師が毎日「話しかける」という突飛な設定の映画なのだが(重松清の原作だったか)、映像を見る限り、映画として成立しているようだ。
話としても現代社会にとって大事なテーマで、ネタ不足といわれているハリウッドも、見習ったらどうかと思う。大事なテーマはいくらでもある。
うまく機会を見つけて、本編を見たい、と思っている。
それにしても、20年、ずっと頑張ってこられたのだと思うと、敬意で頭が下がる。続ければ、夢は叶う。
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