源氏物語
最近は英語のメルマガを書いていまして、そのネタ作りのために?源氏物語を今読んでいます。源氏物語など先刻ご承知!というフリをしていたいところですが、実は読んだのは初めてだったりします。
もちろん高校生の時に古文で読んだりはしましたし、いろんなところでそのイメージだけは見ているけど、きちんと読んだことはありませんでした。
今さしあたり読んでいるのは、瀬戸内寂聴版と与謝野晶子版。
寂聴版は、やや長すぎるくらいふくらませてあるのだけれど、わかりやすいのが特徴。さらに巻末の寂聴の解説や、あらすじがわかりやすい。源氏の全体のニュアンスをつかむのにとてもいいです。
与謝野晶子版は、洗練された現代語という感じで、切れ味がよし。ただし、やはり昔の訳なので、アタマにさらっと入ってくるというのと少しだけ違う。
端的に表れるのは和歌の扱い。晶子バージョンでは、歌の解釈はいちいちは書かれないのに対して、寂聴版はかなり丁寧にくだくだしく歌の意味が書いてある。斜め読みでも意味をつかもう、という魂胆の私にとってはとても便利であります。
原語を知りたければ(高校時代の古文、ですね)、ネットで源氏物語研究のページがあるので、実はゼンブ書いてある。全く便利な時代です。
で、読んでみて。
最初の4章ぐらいまでは、つまらない恋物語、というふうにもとれて、光源氏、あんたも好きねえ、純情めかして、とも思えたが、章を重ねるにつれて、人間関係が重層的になり、政治的なニンゲン心理の動きも多くなってくる。源氏があちこちに恋や子種をばらまくことで、嫉妬や、殺人(ただし一種の無意識の呪いで)まで起きる。一方で、登場人物がしだいに死に、死ぬことでまたあらたなドラマが生まれる。
源氏は自分の義理の母(皇后陛下たる女性)との間に生まれた隠し子を天皇に即位させてしまう。自分のお気に入りの少女がいれば父親に内緒で預け先から無理矢理拉致して自分の家に住まわせてしまう。
源氏は美しく、限りなく優しく、なおかつ鈍感で、ずうずうしい。
それでもみんな憎めない。
読み進めていくと、日本人がこの物語を繰り返し繰り返し紋切り型ともいえる絵画化にいそしんだのもわけがわかるような気がしてくる。ものごとが残酷と同時にごく平板に変化していく、諸行無常ということが身にしみてくる。
それから文体。原文を読めない以上、あくまで現代語翻訳ベースのハナシなのだが、瀬戸内寂聴の解説あらすじから先に読むと、かなりきわどいどろどろした内容に思えるが、本文はさらりとした印象である。重いことでも、品性を持ってむしろひとつのあはれさを感じさせる、そこが源氏のひとつの真骨頂ではないかとも感じる。
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