夏目美術店のご主人について
靖雅堂夏目美術店のご主人の夏目四郎さんが先月末、お亡くなりになりました。本当に突然のことで、とても驚いております。
夏目さんは日本最大の個人交換会「千束会」を主宰しておられ、軽妙でダンディ、人を包み込む優しさと風格がありました。
「交換会」というのは公開オークションとはひと味も二味も違う、美術商同士の交流の場でもあり、有る意味で「戦い」の場でもありますが、そこには明文化されたルールもさることながら、見えざるルール(マナーと云った方がいいでしょうか)があります。
つまりそこは商売の「場」なのですが、一方で、スポーツと同じく紳士的な交流の「場」でもあるのです。そこにホストでもあり、ご意見番でもある「会主」の風格というものは非常に重要なものでもあります。その「ルール」をさりげなく成立させる触媒と申しましょうか。
「千束会」には夏目さんの独特の風格があり、「美術商」を生業としているものが、誇りを持てるような場をさりげなく作っておられました。私など入り立ての新人にもかかわらず、何かにつけて声を掛けて頂きました。
亡くなるつい前々日ぐらいにもお元気な姿を拝見したばかりなので、何か狐につままれたようです。
片岡球子先生にも非常にお親しい夏目さん。その他にも日本の重要な美術家を陰に日向に支えられきた方がふらりといなくなられてしまう。本当にさびしい。
美術ディーラーの世界も、やはり様々な人たちの「人柄」でささえられています。次ぎの時代を担う人材が生まれてきて欲しいし、自分も何程かは役に立てるように精進したいと思います。
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