伊藤若冲展の注目作
ぼくが今回お勧めなのは、上記に画像を一部掲載させていただいた、若冲の紙本墨画(紙に墨一色)の屏風。
※詳細な画面は、プライスさんのブログの、花鳥人物図屏風、鶴図屏風で見ることが出来ます。
いわゆる略筆で恐ろしくスピード感あふれる筆致で、この二点の屏風は描かれているのですが、形のつかみ方がすごい。
鶴や人物は卵状の「楕円」に見立てられ、松葉は枝に留まった鳥のように見える対称図形に置き換えられる。その見立てが一気呵成に描かれたような線であらわされるのですが、一方で、鳥や花のディテール、とくに墨のにじみを利用した「筋目書」などは、極めて繊細に描かれていて、果たして実際若冲はいかなる順番とスピードで筆を運んだのか。知りたくなる。
誰か東博にイタコのおばあちゃんを呼んで、憑依して描いてもらえないでしょうか。
そしてこの幾何学図形への見立てぶり。△、□、○に対象を見立てる考え方自体は、多分この時代には世界史的にも日本史的にもあっただろうし、構図を作るときの基礎でしょうが、そのことをこれほど快楽を感じさせるものに仕上げた例があるのでしょうか。若冲以前にも以後にもないように思う。
明らかに数千年に一度の天才じゃないと描けない絵だが、それにしてもこのスピード感と完璧な対象の把握というものは、どうしてありうるのか、目の前にあるのだから仕方がない。
ということで、途方に暮れて目の前の「奇跡」を呆然と眺めるしかないのです。
ところで、たまたま芸大かどこかの学生さんらしき団体がゾロゾロこの展覧会を見学しておられました。この超絶技巧、是非再現に挑戦してみて欲しいです。
あの線、あの曲線、あの「筋目書」の1cmでも完璧に真似ることができたら、凄いと思うのだけれども。
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