銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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ボストン美術館

   

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ボストンはニューヨークの北東、鉄道で4,5時間、飛行機で1時間ほどの場所にある。アメリカ建国の際に重要な役割を担った土地。

ボストン美術館は、私にとっては、日本近代美術の父といってよい、岡倉天心が、その後半生でその美術館の要職につき、日本美術の監修をまかされた美術館として興味のある場所であった。

 

今回、他の美術館を回る予定をさておいて訪れた。

 

この美術館を特長づけるのは、世界中に羽を広げたような広い広いコレクションの幅である。世界屈指と言っていいのではないか。アジア、アフリカ、アメリカ、ヨーロッパ、の近代以外の歴史的地層をほぼ全て覆ったコレクションと展示である。

 日本美術展示

岡倉天心の肝いりだけあって、日本美術のスペースは中国美術と並んで際だって大きい。訪れたときは「鷹」をテーマに、主に掛軸、屏風の類が展示されていたが、江戸時代の参勤交代の意味や、江戸時代の初期には権勢を誇っていた武士階級が、後半形だけになって衰退し、商業階級に実質的な力を奪われてしまったことなど、詳しく解説してあり、日本文化に対しての並ならぬ理解があることがうかがわれた。そして「鷹狩り」が、幕府徳川家と有力藩の威勢を示すシンボルとして使われていたことなどが紹介される。

 

どの国の展示にしても、「その国の文化、背景を包摂した形での展示を心がける」というポリシーが貫かれていて、日本の場合は、特に仏像の展示が日本の寺院内を再現した展示になっていた。石の床、太い木の柱、格子状の天井に、ごく少ない光、で荘厳な雰囲気を再現。そのほかの展示も日本的空間を意識していた。

 中原南天棒

外国での日本画の展示は「掛軸」を「額装」に直した物が多い、と父には聞いていたが、ここボストンでの展示はむしろ掛軸の表具仕立てをそのまま生かしたものがほとんどであった。ボストンで働く日本人などは、ここで初めて日本文化に触れる、という人も少なくないのではないか。

 

 

 

 

 

 

 

日本の展示以外、エジプト、インド、ギリシャなど、美術の源流を勉強していこうと思えば資料に事欠かない展示であったし、「オールドマスター」と呼ばれるヨーロッパ近世のコレクションが展示してある大広間には(写真参照)圧倒された。

オールドマスター


 


 


 


 


なんと、ここで、チェルシーでも出会った Damien Hirst の特別展に出会う。ハエの死体を一面に貼り付けたオブジェ、蝶々の羽根を一面に貼り付けた曼荼羅、水槽に密閉した羊、巨大なガラスケースに封じ込めた「収集家」の人形と、生きた蝶と植物の作品など、どれもこれも人のモラルや常識に皮肉と挑発の刃を突きつけるようなものばかりである。(写真の撮影は禁じられた)。率直に言ってセンセーショナルをねらう作品群のあざとさには辟易するが、しかし忘れられない展示であることは確かである。近年評価が高いという。こちらの村上隆?

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