銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

*



都内査定

   

都内某所のご家庭に査定に伺う。
よくあるケースだが、もっておられる方と、実際の値段の開きが大きく、話がまとまるのは難航しそう。

ただ、今回このお話において立ち会ったお客様に「私はこの人(田中自知郎)だけは美術商の中で信頼しているんだ。だって、この人は奥歯に物のはさまったような言い方を絶対しないもの。」とおっしゃっていただいた。

父にそういう印象を持っていただいていることはありがたいと思う。「商売人にしては」正直というか、明け透けというか、はっきり言ってよけいなことまでしゃべりすぎる、と家族はハラハラする場面も多い。私も正直こそ一番、と思っている部分があるけれど。

ただ商売人である以上、たんなるお人好しでは仕事はできない。なぜなら、騙そうとする人や、騙す意図はなくとも、全くめちゃくちゃな値段で商品の価格を思いこんでいる場合が多いためである。だましをかまそうとしているネタを自知郎用語で「ガセネタ」という。

リチョウの壷を「3億で買わないか。」とかいう類がそれである。「中国では5億でほしいという人があったが売らなかったが、お金が必要になった」などの口上である。(じゃあ中国で売りなさいっての)そういうわかりやすいケースならいいが、かなり率直に質問をぶつけて初めてわかるネタもある。相手の意図、人柄を見抜く力、また商品の相場価格にたいしての自信も必要である。・・・何より、価格に対する知識と経験が重要だと思うが。

また、一般の方で、多いのが、「古い」ものは「高い」という「思いこみ」である。単純化すると、「古い」ものは「安い」。平山先生の本画着色の新作を買おうとすれば、たいていは数千万必要であるが、円山応挙の立派な掛軸でも、数百万で買える。単純な図柄や、?な作品なら100万いかない。数千万するものはごくごく一部であろう。(これは調べた数字でないので、責任は持ちませーん。おおざっぱなところ。)

骨董屋や、美術商は、1のものを100に言う、というような偏見を持っている方に会ったことがあるが、非常に腹が立った。美術品には相場があるのであって、めちゃくちゃな値段で売買できるはずがない。商人と市場原理で、ものの値段は決まる。変な業者もいるだろうが、味噌も糞も一緒にしてもらっては困る!!

 - 日常