銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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速水御舟展ほか

   

弊社の守備範囲とおそらくかなり近い美術館である、山種美術館
http://www.yamatane-museum.or.jp/
の「速水御舟」展に行ってきました。
参考:山種「御舟」所蔵品
http://www.yamatane-museum.or.jp/html-database/ha-gyo/hayami-gyoshu.html

あの小さな美術館でまた死ぬほど混む中をくぐらされるのかと思うとユーウツになりながら行きましたが、案外「適度」な混み具合で、案外ゆっくりと見られました。

やはり、僕の目にもっとも衝撃的にすばらしいのは「白芙蓉」
http://www.yamatane-museum.or.jp/html-database/ha-gyo(L)/hayami-gyoshu-A0595.html
でありました。「墨」と「胡粉」と「赤」と「金泥」の四色で抑制的に書いたこの絵の豪華絢爛なこと、恐ろしい人だと思いました。「墨」と胡粉の「白」がそれぞれに色として独自に主張している。そして花の中心の赤が鮮烈な効果を与えている。
(おっと、今ウェブで見て「ふーん」と思った方、この絵は「実物力(じつぶつりょく)」がきわめて強い作品なので、見なきゃわかりません。東京・九段下の山種にGO!)

また、御舟の言葉で印象的なのが、ここでは(今自宅)資料がないので、記憶頼りですが、<ある種の単純化、そぎおとしていくこと>が絵には必要であるが、その<単純化>ははじめからそれをねらっても駄目だ、多くの無駄を、様々に試みてこそ、その絵描きの絵の<真実>の<単純化>ができてくるのだ、最初から「ねらって」できてくるものでない、ということです。

たぶん御舟の最晩年の水墨が、技術的に可能というだけの理由で、早い時期に試みられて、ある程度の完成度を持ってしまっていたとしたら、あんまり面白い画家になれなかったかもしれません。

芸術には「伝統」と「破壊」が、「無駄」と「単純化」が共にプロセスとして必要なのでしょう。で、こんなコリクツをこねていても、別段芸術は進まない、という警告も御舟は述べています。

実践あるのみ。
商売だって、スポーツだって、同じじゃないかしら。

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